美容室を開業する際の店舗・テナント物件探し
美容室を開業する上で重要となる物件選び。一般的には、店舗・テナント物件を借りて開業する方が多いと思います。美容室の開業は、保健所から営業許可をもらう必要もあります。はじめての開業では、店舗の立地や建物など、どのように決めればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。この記事では、美容室を開業する際の店舗・テナント物件探しについて解説します。
■10秒でわかる!この記事の内容
・立地は最も重要な要素。既存顧客の有無で出店エリアの決め方が変わる。
・保健所から営業許可をもらうための基準を考え、広さなどの条件を決める。
・家賃や広さなどの条件は、優先順位をつけて決める。前テナントの退店理由も確認する。
・出店エリアに強く、店舗・テナント物件を得意とする動産会社を選ぶ。
店舗・テナント物件の種類
お店のコンセプトが決まったら、いよいよ物件探しです。美容室の出店で利用される店舗・テナント物件の種類について説明していきます。
●路面店(ろめんてん)
路面店とは、通りに面した道路から直接入れる店舗のことを言います。上階の店舗に比べ圧倒的に通行客の目にとまりやすいことが特徴です。更に間口が広く出入り口も広いほど、認知度も高く集客を見込みやすくなりますが、家賃も高くなります。通りに面した物件でも、ビルの2階以上の店舗は「空中店舗」と言います。
●商業ビルや商業施設
商業ビルは、駅から近い立地で空中店舗であれば、路面店より家賃が安くすむというメリットがあります。商業施設は、様々な業態の複数店舗が入居する施設です。最大のメリットは、なんといっても集客のしやすさです。商業施設は、子供から高齢者まで広い客層を取り込むことができ、郊外でも人が集まりやすいのが特徴です。ただし、営業時間や営業日を施設側に合わせなければいけないなど、営業の自由度が低いことが多いです。
●居住用マンションや一軒家
個人サロンの場合、居住用マンションや一軒家で開業されるケースもあります。テナント物件に比べ家賃が安いことが特徴です。但し、すべての居住用マンションが開業OKとは限らず、事前に調査が必要です。また、居住用マンションの場合、管理規約に従った運営となり、看板の設置など制限がかけられる可能性も高くなります。
●店舗付き住宅
店舗付き住宅とは、1階が店舗で2階が住居など、店舗と住居が一体となった物件です。家族経営している美容室などで、自宅兼店舗として利用されます。住居部分を従業員の休憩スペースや倉庫として利用する方もいます。
●シェアサロン
シェアサロンとは、店舗を持たないフリーランス美容師に、美容室の設備を時間単位などで貸し出す施設です。セット面や施術スペース、施術に必要な設備があらかじめ用意されています。フリーランス美容師や開業準備中の美容師によく利用されています。
店舗・テナント物件を借りる際の主な状態
開業のために物件を借りる際、多くの物件は内装や設備がない状態の「スケルトン物件」です。それに対して、前テナントが使用していた内装や設備が残った状態を「居抜き物件」といいます。
●スケルトン物件
スケルトン物件とは、内装や設備が一切ない柱・梁・壁・床など建物の「躯体(くたい)だけの状態」をいいます。前テナントが解約により現状回復で、内装や設備を全て契約前の状態に戻した物件です。店舗の賃貸借契約では、退去時にスケルトン状態に戻す現状回復を前提とする物件がほとんどです。お店のコンセプトに合わせた、内装デザインが可能になります。
●居抜き物件
居抜き物件とは、前テナントが利用していた内装や設備を利用できる物件です。前テナントと規模やコンセプトが近いお店をオープンする場合などは、出店の工事費用を削減することができます。オープンまでの期間も短く済む場合が多く、開業資金が少ない方やオープン期間を短縮したい方に向いている選択肢です。但し、契約時に、前テナントから内装や設備を買い取るため「造作譲渡料」が必要です。また、前テナントから店舗を引き継ぐので、店内のレイアウトはある程度決まってしまうことに加え、前のテナントのイメージや評判を引きずる可能性もあります。検討の際は、前ナントが営業していた頃の評判や退店理由なども確認することが重要です。
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美容室出店の立地について
立地は、ビジネスを成功させるためにとても重要な要素です。独立して開業する場合は、既存のお客様がいる場合といない場合で、立地条件が大きく変わってきます。
●既存のお客様が「いる」場合
既存のお客様がいる場合は、来店導線が大きく変わってしまうと、お客様が離れてしまうことがあります。お客様がどのようにしてお店に通われているのか把握しておく必要があります。
□ 自宅から、会社から、仕事帰り、何かのついでなど
□ 徒歩、自転車、電車、バス、マイカーなど
□ 駅近、駐輪スペース、駐車場など
●既存のお客様が「いない」場合
既存のお客様がいない場合は、出店するお店のコンセプトやターゲット層が来店すると思われる場所に絞ります。競合店はもちろん、ターゲットがかぶりそうな別業態のお店の有無や状況も観察しエリアを絞っていきましょう。
□ 駅の乗降者数
□ 競合店
□ 来店手段(徒歩、自転車、電車、バス、マイカーなど)
店舗・テナント物件を得意とする不動産会社では、物件周辺の商圏情報レポートを提供してくれる会社もあります。商圏情報レポートのよくある項目例は、街の情報(街の特性、立地、乗降客数)、人の情報(市区町村の人口特性、商圏人口、居住者や労働者特性、消費支出)、施設の情報(顧客誘導施設、周辺施設、競合施設、出退店情報)などです。
家賃や広さなどの条件について
物件を決める条件には、下記のようなものがあります。希望条件が高すぎてなかなか物件が見つからない方も少なくありません。条件に優先順位をつけて探しましょう。
□ 立地
□ 家賃
□ 面積
□ 使用階
□ 築年数や見た目
□ 建物の設備
□ 開業時期 など
また、美容室の出店は、お店の住所を管轄する保健所へ届出を行わなければなりません。作業室の床面積など、保健所から営業許可をもらうために必要とされる基準があります。下記はその一例です。詳しくは、管轄する保健所のホームページなどで確認することができます。
【床面積】
美容の業務を行う1作業室の床面積は、13平方メートル以上であること。
【いすの台数】
1作業室に置くことができる美容いすの数は、1作業室の床面積が13平方メートルの場合は6台までとし、6台を超えて置く場合の床面積は、13平方メートルに美容いす1台を増すごとに3平方メートルを加えた面積以上とすること。
【客の待合場所】
作業室には、作業中の客以外の者をみだりに出入させないこと。作業前の客を作業室と明瞭に区分された場所(待合場所)に待機させる措置を講じること。
など、他にも複数の基準があります。
この記事のまとめ
美容室を開業する際の店舗・テナント物件探しについて解説しました。独立して開業する場合は、既存客の有無で、立地条件が大きく変わります。開業しても集客ができなければ経営が続かなくなります。また、物件選びは、工事などの初期費用や賃料などの固定費に大きく影響します。保健所から営業許可をもらうため、基準をクリアする物件である必要もあります。物件探しに利用する不動産会社は、店舗物件に強い、居住用物件に強いなど、得意不得意があります。希望するエリアに強く、店舗・テナント物件を得意とする不動産会社を選ぶことがとても重要といえます。
店舗ネットワークでは、希望条件に合わせた物件検索や物件リクエスト機能で、開業に必要な物件情報をお届けいたします。また「建築家による内装プランニング(アーキテクツ・スタジオ・ジャパン社提供)」のご案内も行っております。物件探しと合わせてお気軽にご相談ください。地域密着の不動産会社が、出店をサポートいたします。
著:店舗ネットワーク本部