歯科医院開業の店舗・テナント物件探し
歯科医院を開業するにあたって、店舗・テナント物件を借りて始める先生も多いと思います。しかし、どんな物件で医院を開業しても成功できるわけではありません。駅前や住宅街などの立地、建物のタイプや条件、居抜き物件など、色々あり過ぎてわからない方も多いのではないでしょうか。この記事では、歯科医院開業の店舗・テナント物件探しについて解説します。
■10秒でわかる!この記事の内容
・一等地の物件情報は、不動産情報が出回ることが少なく、テナント料も高くなる。
・駅前より集客力が弱い郊外物件も、宣伝次第では多くの集患が見込める。
・駅前も郊外も、視認性の高さが重要。また郊外は診療のキャンセル率も低い傾向。
歯科医院開業物件の種類
歯科医院を開業する際に利用される物件も、様々な種類があります。主なタイプの特徴やメリット・デメリットを紹介していきます。
●戸建て開業(戸建て物件)
戸建て開業とは、新しく建物を建てて開業する方法です。医院専用の建物や医院付き住宅などがあります。
【メリット】外観や内装を自由に設計できる、視認性を得やすい、駐車場を確保しやすいなど
【デメリット】開業時の初期費用が高くなる、固定資産税がかかる、建物の維持費や修繕費が発生する、簡単に移転できないなど
●テナント開業(テナント物件)
テナント開業とは、テナントビルや商業施設、医療モールなどの一部を借りて開業する方法です。
【メリット】開業時の初期費用を抑えられる、集客がしやすい、他のテナントと連携できる、移転や撤退が容易にできるなど
【デメリット】賃料が高い、条件により契約や更新できない可能性がある、条件に合う物件がなかなか見つからないなど
●居抜き開業(居抜き物件)
居抜き開業とは、移転や閉院予定の医院の内装や設備を利用して開業する方法です。前テナントと規模が近い医院をオープンする場合などは、工事費用や期間を削減することができます。
【メリット】開業時の初期費用や工期を抑えられる、以前の医院の認知度を利用できる、行政の許可が下りやすいなど
【デメリット】内装やレイアウトが制限される、設置できる機器が限定される、以前の医院の悪い印象が残ってしまうなど
居抜き開業に似た開業方法に、承継開業があります。承継開業は、建物や設備以外に、医療機器、スタッフ、患者さんも引き継ぐことが可能です。ただし、そもそもの物件が少なく、交渉手続きも煩雑になります。
●医療モール(クリニックモール)
テナント物件のひとつとして、医療モールがあります。医療に特化した建物で、複数の医院と一緒に開業するため、駅前など一等地での開業がしやすくなります。また単体の開業とは違い、他科目の診療を受けにいらした方も自分の医院を利用していただけることが多くあります。他科目の医院と連携することで高度な医療を提供することもできます。
●ショッピングセンター・複合施設
ショッピングセンターや複合施設は、広大な駐車スペースや物販店などがあり、多くのお客様が利用されます。診療の待ち時間に買い物をすることもできるため、患者さんも気軽に診療を受けに来ることができるといえます。ただし、施設内で奥まった人目につかないテナントなってしまうこともあるため注意が必要です。また、テナントの間取りや面積には制約もあります。新たなユニット設備を増やしたい時など、対応が難しいケースもあります。医院で働くスタッフの入退室管理や、医院の診療時間や休診日も、施設側のルールに合わせる必要があります。
立地選びのポイント
歯科医院の開業時に適切な立地を選ぶことは、とても重要です。立地は、開業後の集患を大きく左右します。立地選びのポイントを紹介していきます。
●人口と需要
開業を検討している地域の人口や人口動態を調査しましょう。人口の多い地域や高齢者・ファミリー層の比率が高い地域など、患者の需要が見込める地域を選ぶことが重要です。
●競合他院の存在
開業を検討している地域に既に歯科医院が存在するかどうか、開業・移転予定の医院も含め確認しましょう。競合他院の数や診療内容を調査・分析し、競争状況を判断します。競合が多い場合は、差別化戦略やターゲット層の絞り込みが必要です。
●アクセス性と交通状況
患者さんが医院にアクセスしやすい立地条件が重要です。公共交通機関へのアクセスや駐車場の利便性などを考慮しましょう。通勤・通学路や商業地域など、人々の移動が多い場所が好ましいといえます。
●周辺環境
医院の周辺環境も重要な要素です。商業施設やオフィスビルの近く、学校や公園の近くなど、患者さんの利便性を高める要素を考慮しましょう。また、治安の良い地域であることも安心感を与えます。
●地域のニーズと特徴
地域の特性やニーズに合わせて、サービスや診療内容を適応することも重要です。地域の特徴や社会経済的な要素を考慮し、患者さんのニーズに応える医療サービスの提供が求められます。
「駅近物件」と「郊外物件」のメリット・デメリット
駅近と郊外それぞれのメリット・デメリットについて紹介していきます。
●「駅近物件」のメリット・デメリット
駅に近い物件は、潜在患者数も多く、日常的に使う動線上にあるといえます。これは大きなメリットです。家賃は高めになりますが、大きな宣伝費用をかけなくても、立地条件ゆえに自然と患者さんが集まる傾向にあります。しかし、駅前でもビルの上階、いわゆる「空中階」は目に留まらないことも多く、看板が出せる位置や視認性などをしっかりと確認してから見定める必要があります。
●「郊外物件」のメリット・デメリット
郊外の物件は、駅前物件より「集患力」は弱いといえますが、宣伝広告次第で多くの集患を見込めることができます。住宅街の歯科医院を訪れる患者さんは、時間的に余裕がある方も多く、キャンセル率も低い傾向にあります。賃料も駅前に比べ低く、駐車場の確保も比較的容易になります。
建物や物件選びのポイント
歯科医院を開業する際に、適切な建物を選ぶことは重要です。医院の顔になる外観は、医院イメージを左右します。その物件自体が医院業態の出店が可能か、看板が設置できるか、通りからの視認性などの点にも注意が必要です。
●面積とレイアウト
歯科医院には、待合室、受付、診療室、レントゲン室、スタッフルーム、トイレなど、さまざまなスペースが必要です。開業する医院の規模や診療方針に基づき、必要な面積を見積りましょう。また、診療フローに合わせた導線、効率的なレイアウトが可能かどうかも考慮しましょう。
●建物の状態と設備
開業する建物の状態を確認しましょう。設備や設備の修繕が必要な場合、費用や時間を考慮してプランニングしましょう。歯科医療に必要な特定の設備(例: 歯科用チェア、レントゲン装置など)は、重量もあり、設置可能かの確認が必要です。電気容量変更は、配線工事が高額になることがあるので、必ず確認しておきましょう。
●視認性の高さ
多くの患者さんに医院の存在を知ってもらうためには、視認性の高い物件を選ぶことが大切です。例えば、主要道路周辺にある物件やビルの1階の物件は、視認性が高くなります。2階以上の空中階の場合は、看板設置スペース有無やサイズ、通りからの視認性が重要です。また、駅やバス停から近い場所のほうが患者さんにとって利便性が高いため、周辺の環境をしっかり確認して選びましょう。
●同じビル・施設内のテナント
医院の開業に適したテナント物件を探すときは、同じビルや施設内にどんなお店が入っているのかを確認することも大切です。同じ診療科の医院・クリニックが入っていないか、飲食店の臭いが充満することはないかも調べておきましょう。
●用途区分と使用許可
建物が歯科医院の開業に適した用途区分や使用許可を持っているかどうか確認しましょう。一般的には、商業施設や医療施設(診療所)として利用できる用途区分の建物を選ぶことが望ましいです。また、適切な法的手続きを経て、歯科医院としての使用許可を取得する必要があります。
●費用と予算
開業に必要な建物の費用や賃料、修繕費などを予算内で考慮しましょう。財務計画やビジネスプランに基づいて、経済的な持続可能性を確保するためにも、費用と予算のバランスを考えることが重要です。駅前など家賃が高い場合でも、その分、広告宣伝費を抑えることができれば、バランスが取れるといえます。
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この記事のまとめ
歯科医院向けの店舗・テナント物件探しについて解説しました。歯科医院開業の物件探しは、開業後の経営状態を左右する可能性もあるため、慎重に行う必要があります。あまり時間をかけすぎてしまうと開業時期が遅れてしまうため、より効率良く物件を選ぶためにも、地域をよく知る不動産会社に相談し支援してもらうことを検討してはいかがしょうか。物件周辺の商圏レポートなど、無料で提供してくれる不動産会社もありますますので、物件問い合わせと合わせて相談してみましょう。
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著:店舗ネットワーク本部